2011年9月14日 水曜日
モンターナただし
沖縄の街を歩いていて目に飛び込んでくる曲がある。それはR&B調のバラードで 男性ボーカルの曲だが、どこか南国っぽくこの島になじむ。この曲が何なのか知 りたくなった私は、那覇の国際通りを歩いている娘に尋ねてみることにした。 「その曲は「ミルキーウェイ」っていう曲で、ラジオや有線でもけっこうかかっ ているし、若い子の間でも人気。モンターなただしっていって昔アイドルだった みたいヨ!じゃ~ねバイバイ。」と言って娘は去っていった。やはり情報は女子 高生だなと思いながら、私は「ミルキーウェイ」を求めてCDショップに向かった。 店に入ると沖縄出身のアーティストのコーナーがあり、一枚一枚見ていったが 「モンターナただし」の名前は見当たらない。そこで店員さんに「ミルキーウェイ という曲はありますか?」と訪ねてみると、「その曲はCDではありません、再発が ないかぎり見つからないと思いますと。この曲はたしか、モンターナただしの三枚目 に出した「スカイフィッシュランデブー」のB面でしたから、レコードでも見つける のは難しいと思います。今は、宜野湾市で南国の夜というバーをしているみたいだから、 もしかしたら本人が持っているかもしれませんよ。」 私は、早速そのバーに向かった。国道58号線を那覇から北向けに走り、大謝名交差点 を右に上がって真栄原社交街からごく近いところに、そのバーはあった。ドアを開けると サム・クックの「サマータイム」が流れている。沖縄のけだるい夜に妙にあっていた。 「いらっしゃいませ」。と、カウンター越しに恰幅の良い男性が迎えてくれた・・・・。 「モンターナただし」だ。私はオリオンビールを注文して煙草に火をつけた。そして、 ここに来た理由を話してみると、彼は快くインタビューに答えてくれた。 90年、友人がTV番組のオーディションに彼のプロフィールを送ったことからTV出演が 決まり、番組のパーソナリティとして人気を博したのちにあの大ヒット曲「HELLO注意報」 をリリースする。翌年音楽の幅を広げたいと渡米。92年アイドル路線から転校し、 サザンソウル調の「シーサイド・エクスプレス」をリリースしたがヒットまではいかなかった。 そして同年「スカイフィッシュ・ランデブー」をリリース、そのB面である 「ミルキー・ウェイ」が今沖縄でヒット中なのである。ちなみに「モンターナただし」 というのは、あのエミリオ・モンターナから取ったお名前だそうだ。 「ミルキー・ウェイ」がヒットしていることについて聞いてみた。 「あぁ~誰が引っ張り出したんだろうね、あんな昔の曲」。このことに関して本人はあまり 興味がないようだ。「でも、うれしいですよ。私が10代のときの曲を今の子達が気に入って くれているのは。あのときは全然だったからね」。モンターナさんは沖縄に帰ってきてすぐに このお店をオープンさせ、二年目には「南国ドロップス」という11人編成のビッグバンドを 結成し彼はパーカッション兼リーダーを務めるが15年続いたあと惜しくも解散し、 現在新しく「南国サロン」というバンドをドロップスとほぼ同じメンバーで再結成した。 「音楽はずっと大好きだからね。メンバーを揃えるのもカウンター越しに、この曲いいよね、 あんたも音楽好きだねってスカウトしていった。だからうちのメンバーはほとんどお客さん あがりだよ」と、さっきとはうってかわってニコニコしながら話してくれた。 「ミルキーウェイ、どこにもないって言ってたけど、いつにDJしている人が前からよくかけてますよ。 この人おもしろい人でね「HELLO注意報」の時のグッズやら色々持っていますよ」。 私は「ミルキーウェイ」という曲を追って、この空間「南国の夜」にたどり着いた。 そこは、良い音楽とゴキゲンな人達が集まる、 友達の部屋のような居心地の良い場所であった。 レコード探検家 中村かねのぶ PHOTO:G-KEN, MAKE:MOGURA,HAIR:KENG-SHING,STYLIST:YOKOCHU
hands 2002年11月号 掲載
ちなみに南国サロンのインタビューはこちら。 hands WEB magazine