
沖縄の街を歩いていて目に飛び込んでくる曲がある。それはR&B調のバラードで
男性ボーカルの曲だが、どこか南国っぽくこの島になじむ。この曲が何なのか知
りたくなった私は、那覇の国際通りを歩いている娘に尋ねてみることにした。
「その曲は「ミルキーウェイ」っていう曲で、ラジオや有線でもけっこうかかっ
ているし、若い子の間でも人気。モンターなただしっていって昔アイドルだった
みたいヨ!じゃ~ねバイバイ。」と言って娘は去っていった。やはり情報は女子
高生だなと思いながら、私は「ミルキーウェイ」を求めてCDショップに向かった。
店に入ると沖縄出身のアーティストのコーナーがあり、一枚一枚見ていったが
「モンターナただし」の名前は見当たらない。そこで店員さんに「ミルキーウェイ
という曲はありますか?」と訪ねてみると、「その曲はCDではありません、再発が
ないかぎり見つからないと思いますと。この曲はたしか、モンターナただしの三枚目
に出した「スカイフィッシュランデブー」のB面でしたから、レコードでも見つける
のは難しいと思います。今は、宜野湾市で南国の夜というバーをしているみたいだから、
もしかしたら本人が持っているかもしれませんよ。」
私は、早速そのバーに向かった。国道58号線を那覇から北向けに走り、大謝名交差点
を右に上がって真栄原社交街からごく近いところに、そのバーはあった。ドアを開けると
サム・クックの「サマータイム」が流れている。沖縄のけだるい夜に妙にあっていた。
「いらっしゃいませ」。と、カウンター越しに恰幅の良い男性が迎えてくれた・・・・。
「モンターナただし」だ。私はオリオンビールを注文して煙草に火をつけた。そして、
ここに来た理由を話してみると、彼は快くインタビューに答えてくれた。
90年、友人がTV番組のオーディションに彼のプロフィールを送ったことからTV出演が
決まり、番組のパーソナリティとして人気を博したのちにあの大ヒット曲「HELLO注意報」
をリリースする。翌年音楽の幅を広げたいと渡米。92年アイドル路線から転校し、
サザンソウル調の「シーサイド・エクスプレス」をリリースしたがヒットまではいかなかった。
そして同年「スカイフィッシュ・ランデブー」をリリース、そのB面である
「ミルキー・ウェイ」が今沖縄でヒット中なのである。ちなみに「モンターナただし」
というのは、あのエミリオ・モンターナから取ったお名前だそうだ。
「ミルキー・ウェイ」がヒットしていることについて聞いてみた。
「あぁ~誰が引っ張り出したんだろうね、あんな昔の曲」。このことに関して本人はあまり
興味がないようだ。「でも、うれしいですよ。私が10代のときの曲を今の子達が気に入って
くれているのは。あのときは全然だったからね」。モンターナさんは沖縄に帰ってきてすぐに
このお店をオープンさせ、二年目には「南国ドロップス」という11人編成のビッグバンドを
結成し彼はパーカッション兼リーダーを務めるが15年続いたあと惜しくも解散し、
現在新しく「南国サロン」というバンドをドロップスとほぼ同じメンバーで再結成した。
「音楽はずっと大好きだからね。メンバーを揃えるのもカウンター越しに、この曲いいよね、
あんたも音楽好きだねってスカウトしていった。だからうちのメンバーはほとんどお客さん
あがりだよ」と、さっきとはうってかわってニコニコしながら話してくれた。
「ミルキーウェイ、どこにもないって言ってたけど、いつにDJしている人が前からよくかけてますよ。
この人おもしろい人でね「HELLO注意報」の時のグッズやら色々持っていますよ」。
私は「ミルキーウェイ」という曲を追って、この空間「南国の夜」にたどり着いた。
そこは、良い音楽とゴキゲンな人達が集まる、
友達の部屋のような居心地の良い場所であった。
レコード探検家 中村かねのぶ
PHOTO:G-KEN, MAKE:MOGURA,HAIR:KENG-SHING,STYLIST:YOKOCHU
hands 2002年11月号 掲載
ちなみに南国サロンのインタビューはこちら。
hands WEB magazine